解説-21 三条市 水防学習館

【正解:①】

 

【れいあ】
あっ……!正解は、「①」ですね!

【ウスラタラーズ伯爵】
……御名答だ、諸君ら。
だが今回は、答えの数字よりも、この場所が残しているものについて考えてみるがいい。

【れいあ】
残しているもの……ですか?

【ウスラタラーズ伯爵】
ふむ。れいあよ。
なぜ、水害の記録を残す必要があると思う?

【れいあ】
えっと……
同じような災害が、また起きるかもしれないから……でしょうか?

【ウスラタラーズ伯爵】
その通り。
では、なぜ起きるかもしれない災害を、わざわざ展示しているのだろうな。

【れいあ】
うーん……。
知ってもらうため?

【ウスラタラーズ伯爵】
半分正解だ。
人は、見たことのない危険を軽く考える。
だが、実際の写真を見る。被害を知る。体験する。
すると、初めて「自分にも起こるかもしれない」と考えられる。

【れいあ】
あっ……。
だから、ドア水圧体験や、水害降雨再現シアターがあるんですね。
知識だけじゃなくて、体験として覚えてもらうためなんだ。

【ウスラタラーズ伯爵】
その通り。
人は、聞いたことより、体験したことの方を覚える。
だからこそ、この場所には体験展示がある。

【れいあ】
なるほど……。
でも伯爵。もう一つ疑問があります。

【ウスラタラーズ伯爵】
ほう?

【れいあ】
2004年の7.13水害も、2011年の7.29水害も、もう昔の出来事ですよね。
なのに、なぜ今も伝え続けるんでしょう?

【ウスラタラーズ伯爵】
良い問いだ。では逆に聞こう。
百年前の洪水を知る者は、どれほどいる?

【れいあ】
あ……。ほとんどいないかもしれません。

【ウスラタラーズ伯爵】
そうだ。人は忘れる。
時間が経てば、危機感も薄れる。
「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」そう思い始める。
だが、川は人の記憶に合わせて流れを変えたりはせぬ。

【れいあ】
……。

【ウスラタラーズ伯爵】
だからこそ、記録を残す。
だからこそ、語り継ぐ。
だからこそ、学び続ける。
それが、未来の命を守ることにつながる。

【れいあ】
なんだか、ここって水害の怖さを学ぶ場所というより……
命を守る方法を学ぶ場所なんですね。

【ウスラタラーズ伯爵】
ようやく見えてきたか。
この施設の価値は、恐怖を伝えることではない。
教訓を伝えることだ。

【れいあ】
写真や地図や体験展示も、「あの日こんなことがありました」で終わらせるためじゃなくて、「もし次が来たらどうするか」を考えるためなんですね。

【ウスラタラーズ伯爵】
その理解で良い。
守護者とは、危険が来てから慌てる者ではない。
危険を知り、備え、守る者だ。

【れいあ】
……なんだか、
ここに来る前と後で、防災って言葉の意味が変わった気がします。

【ウスラタラーズ伯爵】
ふむ。知識とは、集めるためにあるのではない。
誰かを守るためにある。それを忘れるな。

さて――
諸君らの観察力、なかなか見事だった。
次の場所でも、その目を曇らせぬことだ。期待しているよ。