解説-12 株式会社 近藤製作所


【れいあ】
あっ……!答えは、「のっぺ」ですね。
新潟で昔から親しまれてきた、郷土料理です。
【ウスラタラーズ伯爵】
……御名答だ、諸君ら。
のっぺ。里芋や野菜などを煮て作る、越後の食文化を映す一品である。
【れいあ】
近藤製作所さんは、鍬をはじめとした農業用品を作る鍛冶屋さんですよね。
その鍬で土を耕して、野菜が育って、やがて食卓に並ぶ。
……そう考えると、「のっぺ」につながるんですね。
【ウスラタラーズ伯爵】
ふむ。よく見えてきたようだな。
鍬は、料理を直接作る道具ではない。
だが、食の始まりを支える道具である。
【れいあ】
火で鍛えられた鉄が、土を耕す道具になって、その土から育った里芋や野菜が、新潟の郷土料理になる……。
なんだか、ものづくりと食文化が一本の線でつながった気がします。
【ウスラタラーズ伯爵】
その通り。暮らしとは、一つの技だけで成り立つものではない。
鉄を鍛える者、土を耕す者、作物を育てる者、料理を受け継ぐ者。
その連なりが、土地の文化を形づくる。
【れいあ】
のっぺって、お正月や人が集まる時にも作られるんですよね。
家族や地域で囲む料理だからこそ、長く受け継がれてきたのかな……。
【ウスラタラーズ伯爵】
ふむ。特別なものほど、日々の積み重ねから生まれる。
鍬も同じだ。土に入り、何度も振るわれ、使う者の手に馴染んでいく。
派手ではない。だが、なくてはならぬ。
【れいあ】
……近藤製作所さんの鍬って、食卓のずっと手前を支えているんですね。
完成した料理だけを見ると気づけないけど、その前には、土と道具と人の手があるんだ。
【ウスラタラーズ伯爵】
悪くない理解だ、れいあ。匠の技とは、目の前の品だけに宿るものではない。
人の暮らしの奥で、静かに支えるものにも宿る。
さて――
諸君らの観察力、なかなか見事だった。
次の場所でも、その目を曇らせぬことだ。期待しているよ。
